作編曲家・指揮者 藤野浩一さん

PROFILE
1955年新潟県生まれ。東京音楽大学音楽学部器楽科卒業。在学中トランペットを金石幸夫氏に、和声学を池辺晋一郎氏に、作曲と飲酒を細矢禊氏にそれぞれ師事する。卒業後作編曲家、キーボード奏者としてプロ活動を始める。
1982年より中森明菜コンサートの音楽監督を7年間にわたって務める傍ら、NHKレッツゴーヤング、ザッツミュージック、愉快にオンステージ、アイドル・オン・ステージ、紅白歌合戦など数多くの音楽番組のレギュラースタッフとして作編曲活動をする。現在、東京佼成ウインドオーケストラ ミュージック・アドヴァイザーとしても活躍中。

アレンジャーの意図が伝わる
テクニクスの圧倒的な表現力

― 作編曲家として、スタジオ録音や音楽番組のバックバンドの音楽に触れられる機会が多い藤野さんですが、普段はどのようなことを意識して音楽を聴かれるのでしょうか?

藤野さん 僕は作曲や編曲をする立場なので、曲を録音した環境や曲をマスタリングするエンジニアの力量、というものをどうしても意識してしまいます。「原音を忠実に再現する」というのは、レコーディング環境の状態や編曲者の意図が、きちんと“かっこよく”再現できているか、ということだと思うんですよね。音そのものがダイレクトに聴こえることがもちろん大切ですけど、スタジオでどのように編曲され、どういう音の作り方をされたのか、レコーディング作業のディテールまでを想像して聴いてしまいますね。

藤野浩一さん

― テクニクスでの試聴体験はいかがでしたでしょうか?

藤野さん 今回はさまざまなジャンルのハイレゾ音源を聴かせてもらいました。その中で、ある有名な歌謡曲に、ものすごく多量のリバーブがかかっていましたよね。誰でも必ず聴いた事のある大ヒット曲ですが、これまで誰も意識して聴いてこなかった細工までも、テクニクスでは簡単に見破られてしまう。でもそれは逆に、スタジオでの音作りの風景をちゃんと再現できているからだと感じます。「あぁ、こういう風に聴かせたかったのか、こういう音楽が作りたかったのか。」という作り手の意図がわかるんです。
これはとても面白いことなのですが、ここまでクリアに編曲者や収録エンジニアの力量が伝わってくると、その音楽に対して行っている“トリック”までわかっちゃうんですよね。聴こえにくい音を大きくしているな、とか、クラシックであっても大量のリバーブを追加しているな、とか。オーケストラのパートをそれぞれ別の部屋で録音している、なんてところまで…。 テクニクスを通してハイレゾ音源を聴くと、ごまかしが全く効かないですね。

※ リバーブ…リバーブレーション(reverberation)のことで、音の残響の意味。

テクニクス開発者の技術力を感じる
パーカッション音の粒立ちと立ち上がりの良さ

― テクニクスは細かな音の雰囲気や構成まで表現できている、ということでしょうか?

藤野さん そうですね。どういう音色で録音したかったのかという、レコーディングエンジニアのポリシーまでもわかりますね。あと驚いたのは、サックスのリード周りの摩擦音やボーカルの立ち上がりの音、いわゆるサ行の音がとても良く聴こえるところですね。このディテール音って埋もれがちな音なんですよ。その細かい音をはっきり表現できるところに感動しました。その点で言うと、パーカッションの粒立ちがものすごいところも、テクニクスの特長だと思います。パーカッションの飛び抜け方が素晴らしいです。ミッドローから中域にかけての音のスピードが非常に上がっています。よくチューニングされていますね。
粒立ちがはっきりしている、というのはスピーカーやユニットのレスポンスがとても速い、ということなんですよね。高い技術がなければ、この音はなかなか付いて行かないんです。「音の立ち上がりの良さ」をテクニクスの開発者は意識して作られていたんだろうな、と強く感じました。

藤野浩一さん

アップコンバートされるCD音源から見えてくる
録音時のスタジオの臨場感と空気感

― 本日は藤野さんが携わられたCD音源も試聴していただきましたが、CD音源を楽しむオーディオとしてのテクニクスは、いかがでしたか?

藤野さん リファレンスシステムで聴かせてもらいましたが、CDの音源でも十分、スタジオと同じ空気が感じられました。オーディオを通すと、そのスピーカーやシステムのクセが出ることが多いので、自分の意図したものにさらに色がついた状態で聴こえてくるかな?と思っていたんですが、スタジオで聴いている音と遜色(そんしょく)なかったことに、大変驚きました。CD音源でもこれだけの再現ができているのだから、同じ音源をハイレゾで聴いたら、もっとスタジオの雰囲気が伝わってくるんだろうな、と思いました。

藤野浩一さん

― 今回、同じ音源をリファレンスシステムとプレミアムシステムで聴き比べていただきましたが、どのような違いを感じられたでしょうか?

藤野さん リファレンスシステムは、音が広がっていくイメージ、プレミアムシステムは音がストレートに飛んでくるイメージがします。
例えば、オーケストラのような大きなダイナミックレンジを持つ音楽を聴くとしたらリファレンスシステム、ジャズやボーカルのようなシャープなものを聴くとしたらプレミアムシステム、という感じで、自分の趣味で選んでみるのも面白いかもしれませんね。

クオリティ勝負のハイレゾ音源を楽しむ
高品質なオーディオシステム

― もし今後、ハイレゾ配信を前提とした楽曲の作編曲に携わるとしたら、どのような音楽を作りたいと思われますか?

藤野さん 小さな編成でコンピューター同期しないもの、電子楽器を使わないスタイルで演奏者の技量がストレートに出るものを同時録音で作ってみたいです。しかも、あとで音源の調整を一切しないものがいいと思います。つまり本物のミュージシャンにしか出来得ない「トリック無しの一発勝負」の音楽です。
そしてその音源を通すオーディオも、高いクオリティを誇るものが良いですよね。個人的には、そういった部分をテクニクスブランドに期待しています。こだわりと高い技術力のみで勝負している音楽は、同じように高い技術力を結集させて作ったオーディオで楽しんでほしいですからね。

― テクニクスはどのような方におすすめしたいですか?

藤野さん 若い人たちにも、ぜひテクニクスは体験していただきたいですね。正直若いときに知ることができていたら、もっともっと楽しかっただろうなぁと思いました。年齢を重ねると、可聴領域がどうしても狭くなってしまうので。
子供には、大人に聴こえない高音域の音が聴こえますよね。例えば、新幹線が近づいてくるとき、大人はまだ新幹線の存在を感じていないのに、子供は「もうすぐ来るよ!」って言ったりするでしょう?これは、子供の可聴領域が広いからなんですよ。だから、広い音域が聴こえる年齢のときにこのテクニクスに出合っていたら、また違う楽しみ方ができたかもしれないなぁと感じました。

藤野浩一さん
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